ヨーロピアンパパ推薦盤紹介!「REAL ROCK FILE」

ROLLING STONES

GET YER YA-YA'S OUT!
DELUXE EDITION

(記:2009/12)

ZEP

ローリングストーンズは、待望の新作にして生涯の最高傑作『LET IT BLEED』の
プロモーションを兼ねた北米ツアーを1969年11月から12月にかけて行った。
1970年9月、横行する海賊盤『LIVE R Than You'll Ever Be 』の抑制の意味もあり、
そのツアーのライヴアルバムとしてリリースされたのが、
『GET YER YA-YA'S OUT! 』である。

ここで聞ける新しい時代のロックンロールは、1970年のフリー、
71年のレッド・ツェッペリン、81年のトーキング・ヘッズ、
84年のルー・リード・バンドと並びバンドグルーヴとして最高のものだ。
ロックが持つ危うさをタフで荒々しい演奏に乗せ、
時にルーズに時にスピード感たっぷりに演じて魅せる。
多くのバンドが模倣し、手本としたスタイル。

俺は当時、その本丸を徹底的に追いかけた。
映画『GIMMIE SHELTER』は、ツアードキュメントの性格上ライヴの雰囲気は伝わるが、
演奏を楽しむことに集中出来ない。
BOOTLEG で全17日間、22公演を血眼になって探し回った。
ストーンズは、当時あれだけの知名度がありながら、
ツェッペリン、デッド、クリーム、ジミ、ディラン、ピンクフロイドなどに比べ、
流出するソースは極めて少なく、出てきても俗悪な音質のものばかり。

CD時代になり、新音源発掘とデジタル処理による音質向上によって
ほぼツアーの全貌を把握することが出来たものの、やはり十分とは言いがたかった。
なぜなら映画とライヴアルバム用に収録された正規のサウンドボードソースは、
APPLE ACETATE(プロモーション用に製作された別ミックステイクを収めたアセテート盤)以外一切出回っていなかったからだ。

21世紀に入り、ディランや二ールヤングの未発表ライヴなど、
当時では考えられなかったような貴重な音源が続々とリリースされる中、
ローリングストーンズに関しては、ロックンロールサーカスがオフィシャルで出た以外、
驚くほどのインパクトをもって迎えられるような代物はほとんど出ていなかった。
CDがリマスターや、新装パッケージ、SHM-CD、と再発されるたびにボーナストラックが付くんじゃないかと期待してきた、GET YER YA-YA'S OUT!

そして遂に、その40周年記念としてデラックス・エディションが2009年12月16日にリリースされた。

ROLLING STONES
GET YER YA-YA'S OUT! DELUXE EDITION

今回の 40 ANNIVARSARY DELUXE EDITION の内容は

DISC-1
オリジナル・リリースの10曲の2009年最新版ABKCOリマスター・テイク

1.JUMPIN' JACK FLASH
November 27 Madison Square Garden New York
2.CAROL
November 28 1st show Madison Square Garden New York
3.LOVE IN VAIN
November 26 Baltimore Civic Centre Baltimore
4.STRAY CATS BLUES
November 28 1st show Madison Square Garden New York
5.MIDNIGHT RAMBLER
November 28 2nd show Madison Square Garden New York
6.SYMPATHY FOR THE DEVIL
November 28 1st show Madison Square Garden New York
7.LIVE WITH ME November 28 2nd show Madison Square Garden New York
8.LITTLE QUEENIE
November 28 1st show Madison Square Garden New York
9.HONKY TONK WOMEN
November 28 1st show Madison Square Garden New York
10.STREET FIGHTING MAN
November 28 1st show Madison Square Garden New York

DISC-2 未発表ライヴ・テイク
1.PRODIGAL SON November 28 2nd show Madison Square Garden New York
2.YOU GOTTA MOVE
November 28 2nd show Madison Square Garden New York
3.UNDER MY THUMB
November 27 Madison Square Garden New York
4.I'M FREE
November 27 Madison Square Garden New York
5.(I CAN'T GET NO)SATISFACTION
November 28 1st show Madison Square Garden New York

DISC-3 BBKING 、 IKE & TINA TURNER によるMSGのライヴ音源

BONUS DVD 未発表映像
1.PRODIGAL SON
November 27 Madison Square Garden New Yor
2.YOU GOTTA MOVE
November 27 Madison Square Garden New YorK
3.UNDER MY THUMB
November 28 1st show Madison Square Garden New York
4.I'M FREEE
November 28 1st show
5.(I CAN'T GET NO)SATISFACTION
November 27 Madison Square Garden New YorK

今回の内容に関しては、レコードコレクターズの今月号に詳しく記載されているので
参考にされたし。

マディソン・スクエア・ガーデンでの3日間でのセット・リストは以下の通り

1.JUMPIN' JACK FLASH
2.CAROL
3.SYMPATHY FOR THE DEVIL
4.STRAY CATS BLUES
5.LOVE IN VAIN
6.PRODIGAL SON
7.YOU GOTTA MOVE
8.UNDER MY THUMB
10.I'M FREE
11.MIDNIGHT RAMBLER
12.LIVE WITH ME
13.LITTLE QUEENIE
14.(I CAN'T GET NO)SATISFACTION 5.HONKY TONK WOMEN
16.STREET FIGHTING MAN

晴れて今回のボーナス・トラックでコンサートの全曲を再現可能となった。

今日は未発表テイクを含めた音源について。
映像に関しては改めて書くことにします。
改めて曲順に並べてショーの全体を俯瞰すると、やはりブートレグで聞いた印象とは
かなり違うように思うので簡単に書いておく。

オリジナルのアルバムでは、前半〜中盤のアコースティック・セットと
ミディアムテンポのUNDER MY THUMB〜I'M FREE をカット 、
実際には後半のハイライトとなるMIDNIGHT RAMBLER をA面の最後に持ってきている。
3曲目に演奏されたSYMPATHY FOR THE DEVIL をレコードB面のトップに配して
後半はロックンロールとヒットチューンを並べ、コンサートでもラストを飾ったSTREET FIGHTING MAN で終わる。

今回改めて曲順に聞いてみると、ブートレグで聞くよりもはるかに冒頭の3連発が強力だ。
オープニングには持ってこいのエキサイティングな JUMPIN' JACK FLASH でスタート、
チャック・ベリーのカヴァーCAROLはテンポを落としながらも、
このバンドの持つ魅力的グルーヴ感が良く伝わる。
チャーリー、ビルのリズムにミックテイラーのブルースブレーカーズ仕込みの
ウォーキングベースが作り出す横揺れの乗り、
レコードコレクターズではこの乗りをスワンプと言い切ってしまっていたけど、
まさにミックテイラー加入の真骨頂といえる出来だ。
そこにキースのダブルノートとディック・テイラーのピアノが濃厚に絡みつく。

そしてSYMPATHY FOR THE DEVIL へ。
ミックテイラーの丁寧な表へのバッキングと裏のリズムを絶妙に使った
キースのバッキング、ハイハットワークが小気味良い引き締まったドラミング、
以外にも自由に動き回るビルのベース。
ブートレグだと低音が会場を回ってしまい、ギターのバッキングは音がだんごになるわ、
ドラムは聞こえないわで、独特の間を持ったサウンドはこうもダイレクトに味わえない。

キースの鋭いソロの後、満を持してミックテイラーのギターが感情の階段を
スパイラルするように昇り詰めていく。
テイラーのソロと張り合うように激しいリズムで応戦するキースのアンペグが
いやがうえにも興奮を掻き立てる。
STRAY CATS BLUES も前の余韻を受けてルーズなブルースロックとして
より手応えを感じさせるし、ドラマティックに仕上がった
ブルースバラードLOVE IN VAIN も一層効果的。

アコースティック・セットは、ブートレグでは音が悪いせいで貧弱に聞こえたが、
ここではキースのリゾネーターギターが 軽快に響き、
リラックスした様子でミックがPRODIGAL SON を歌う。

『BEGGARS BANQUET』の感覚がうまくステージで再現されている。
同時進行で録音されていたYOU GATTA MOVE は、
オーディエンスにとってはまったくの新曲になるわけだが、
前曲に引き継がれることで違和感はなくいいムードで受け入れられているようだ。

UNDER MY THUMBに続きメドレーで演奏されるI'M FREE は、
本CDではミディアムテンポながら軽快に仕上がっているが
、ツアーの前半では、単独ナンバーとして演奏され、もっとずっとテンポが遅かった。
引きずるようなリズムで演奏されるこの曲はまると催眠的ムードをかもし出す
ある意味このツアーを象徴するナンバー。
そこではミックテイラーが紡ぐリフとソロが独特の
メランコリックなムードを 引き出すのだが・・・今回新たに収録された曲は
全て若干ピッチが早いように感じるのだが気のせいか?

MIDNIGHT RAMBVLER はロックンロールのリズムの押し引きを自在に操りながら、
オーディエンスを扇動していくハイライト。

ロックコンサート自体が単独かつ長時間化し、
ヒット曲の羅列では物足らなくなったこの時代、
いち早く先鞭を付けた面目躍如の構成力には頭が下がる。

この後はラストまでロックンロールで付き抜ける。

(I CAN'T GET NO)SATISFACTIONでは、
ブライアン時代の作品として新曲を優先され、はずされたのかも知れないが、
またしてもこのバンドの荒削りながら、魅力に富んだバンドサウンドが堪能出来る。


対照的な二人の2ギターバンドのかっこよさ、ここに極まる。