ヨーロピアンパパ推薦盤紹介!「REAL ROCK FILE」

I MIGHT GET LOUD ゲット・ラウド

キーワードはノイズ、エコー、トレモロ

(記:2011/6)

ZEP


のんびりとしたテネシー州の田舎町、放たれた牛、
板ッキレにコーラ瓶とシングルコイルピックアップを打ち付けたギター、
アンプから歪んだ爆音でスライドをプレイする男・・・

ロックンロールの歴史を変えてきた長い物語を
3人のギタープレイヤーが語り、セッションを楽しみ、
衰えぬ情熱を音楽に注ぎ込む一夜の始まり。

音楽がもたらす意外性、爆発力、衝動、創造性を
ギターによって体現してきた3人の男たち、

JIMMY PAGE ジミー・ペイジ 65歳、
THE EDGE ジ・エッジ 49歳 
JACK WHITE 34歳
(2009年映画制作時)

JACK: KAY ARCHTOP GUITAR (K6533)
GRETSCH WHITE PENGUIN 、AIRLINE 2 PICKUP MODEL

EDGE:GIBSON EXPLORER

JIMMY:GIBSON LESPAUL 1958

1950年代イギリスはロンドン、ロニードネガンによってもたらされた
スキッフルブームは、後に彼等に受け継がれる、BEATLES、 STONES、KINKS、THE WHO、YARDBIRDS ・・・
そして1958年、LINK WRAY / RUMBLE の歪んだギターサウンドがギターの可能性を広げ、ハードロックの幕を開ける。
ジミー・ペイジも例外ではなくそれをきっかけにギターを手にする、退屈なセッションミュージシャンの日々を創造的な飛躍に繋げるためヤードバーズで
多くの実験的試みを行い、レッド・ツッペリンへ。
初期の弓弾きやテルミンはロックならではのダイナミズムであり、
フィードバック、ファズと同等のエレクトリック・サイケデリアである。



U2が宗教紛争や反核、人権、薬物依存症などについて
メッセージを曲に盛り込む背景には、その母国である、
イギリスの自治領、アイルランドの複雑な歴史、政治、経済が起因する。
血の日曜日事件を歌ったBLOODY SUNDAYが象徴的だ。
1970年代に北アイルランド問題は紛争に激化、不況が深刻化し、
多くの若者は職を失い困窮し、不安定な社会情勢は国民を苦しめた。
イギリス病と呼ばれた社会保障、福祉依存、既得権益による
経済の停滞は、格差社会を生む。
中産階級は堕落し下層階級が失業に追い込まれる状況は、
音楽にも飛び火、暇を持て余した若者のフラストレーションのはけ口として
パンク・ロックは生まれ、パブは人で溢れた。
エッジも例外ではなくダブリンでギターを手に性急なビートを刻み、
その音楽人生をスタートさせる。

1980年代デトロイト低所得者居住区、白人は少なく
メキシコ人に占拠されていたが、彼の9人兄弟姉妹を含む家族はそこを離れることはなかった。
音楽産業はMTV時代、打ち込みを多用したダンスビートがはびこり、
ハウスミュージック、ヒップホップが時代を席巻、バンドやギターを
弾くことは子供の関心からはずれ、時代遅れのかっこ悪いことに
なっていた時代、戦前のブルースレコードを聞き漁り、
通販の安いレトロギターを改造して爆音を撒き散らしていた少年、
ジャック・ホワイトは間違いなく例外であった。 

 


electric harmonic VINTAGE MEMORY MAN
シンプルなリフ、アルぺジオをコンプレッサー、コーラス、ディレイ、リバーブを加えて
加工していくエッジ、ミニマルな音のぶ厚い壁が曲に陰影を与え、バラードから
ダンスビートまでをエコーが覚醒し支配するU2の音世界はエフェクターオタクの
エッジの頭のキャンバスから生まれる、
スタジオで、浜辺で、機材から溢れるエコー、ループ・・・
インタビューではコードの独自の解釈、デモ制作過程でエフェクト効果に
よって異なる質感のサウンドが得られる実例などが熱心に語られる。
ライヴではさらに綿密な曲に合わせた微調整をテクニシャンも含め
的確におこなう、U2サウンドへの並々ならぬこだわりが伺い知れる。


T.C.ELECTRONIC TC2290


KAY ARCHTOP GUITAR (K6533)
ジャック・ホワイトはとにかく目が離せない、
小さな甥とSITTING IN TOP OF THE WORLD を演じ、
GRETSCH のボディに穴を開け、ハーモニカマイクを仕込む、


GRETSCH Triple Green Machine
爆音ノイズと引き裂くような叫びでオルタナティヴなステージを披露する一方、
最後のアコースティックセッションで聞かせるナイーヴなハイトーンヴォイス
のなんと素晴らしいことか?
エッジとは逆に執拗なまでのアナログへのこだわりはノイズに表れる。
戦前のブルースのレコードは針音の彼方にギターと歌とEMPTYが作り出す深遠な世界がある、
ジャックの手で新たに息を吹き込まれたブルースはノイズの彼方にやはり物語がのたうっている、
サンハウスのデスレターが白と赤で斬新に彩られたあの世界、
ブルースのインスパイアがあっても60Sブルースロックとは方向は逆だ。


ZEPPELIN CLASSICS という編集盤にはツェッペリンがカヴァーしたり、
リフをいただいたもの、歌詞をパクッたものなどのマニアックにセレクトされた
ナンバーの原曲が25曲も収録されている。

[1] The Train Kept A Rollin' / Johnny Burnette And The Rock'n Roll Trio
[2] Dazed And Confused / Jake Holmes
[3] As Long As I Have You / Garnet Mimms
[4] Babe, I'm Gonna Leave You / Joan Baez
[5] You Shook Me / Muddy Waters
[6] Stones In My Passway / Robert Johnson
[7] Black Water Side / Bert Jansch
[8] I Can't Quit You, Baby / Otis Rush
[9] How Many More Years / Howlin' Wolf
[10] The Hunter / Albert King
[11] You Need Love / Muddy Waters
[12] Killing Floor / Howlin' Wolf
[13] Travelling Riverside Blues / Robert Johnson
[14] Bring It On Home / Sonny Boy Williamson II
[15] Boogie Chillun / John Lee Hooker
[16] That's All Right / Elvis Presley
[17] Somethin' Else / Eddie Cochran
[18] For What It's Worth / Buffalo Springfield
[19] Gallows Pole (The Gallis Pole) / Leadbelly
[20] Keep A Knockin' / Little Richard
[21] When The Levee Breaks / Memphis Minnie
[22] Shake 'em On Down / Bukka White
[23] In My Time Of Dying (Jesus Make Up My Dying Bed) / Blind Willie Johnson
[24] Chicken Strut / The Meters
[25] Nobody's Fault But Mine / Blind Willie Johnson

こうしたブルースナンバーは単なるスリーコードに止まらず
Dazed And Confused / Jake Holmes を筆頭に
非常にミステリアスな響きのコードが使われている場合が多い。
さらに『天国への階段』を生む背景にトラッドフォークの影響が強いことも
コードの響きがもたらす神秘性に強く惹かれたのではないかと
勝手に推測していたのだが、
映画の中で※Link Wray / Rumble の7inchをかけながら
ジミーが徐々にトレモロが深くかかってこの曲を
ミステリアスにしている部分を身振り手振りで楽しそうに説明するシーンがある。
やっぱり!

link wray / rumble

D - D - E x 2

D - D - A x 1

D - D - E x 1

D - D - B7 on A X 1*

※リンク・レイはタランティーノのパルプフィクションに使われたことで
サーフギター、ロックンロール、ガレージロックの元祖として
人気が再燃、ロカビリーファン以外にも熱狂的支持を得るが、
デビュー曲であるRUMBLEはインストナンバーであるにもかかわらず、
暴力的なイメージ、脅迫的なサウンドという解釈から、
いくつかのラジオ局で放送禁止処分を受けている。
ベーシックな3コードだが独特の響きを持つにコードに置き換えられ、
ざらついたサウンド、トレモロを深くかけることで
今聞いても暴力衝動や退廃感は少しも損なわれてはいない。


ZEPPELIN X に収められた In my time of dying も
Blind Willie Johnson の古いブルースでこの編集盤で
オリジナルを聞けるがいかに斬新なアレンジがされているかに
気づくだろう。
そして映画の中では3人が素晴らしいスライドプレイを聞かせる
粋なシーンとなっている。

In my time of dying
JACK KAY ARCHTOP GUITAR (K6533)
EDGE GRETSCH COUNTRY CLASSIC
JIMMY:GIBSON BARDLAND



アコースティックセッションの最後に選ばれたナンバーは
ザ・バンドの代表曲ザ・ウエイト、
エッジが歌い、ジャックがハーモニーをつけ、
ジミーは楽しそうにソロを挟んだ


The Wight
JACK:GRETSCH RANCHER
EDGE:GIBSON ACOUSTIC GUITAR
JIMMY:MARTIN ACOUSTIC GUITAR